食物アレルギー(特殊型)
I型(即時型、アナフィラキシー型)以外の代表的な食物アレルギーについて解説します。
口腔アレルギー症候群(OAS)
●特徴
即時型I型アレルギー反応とは異なり、通常学童期から大人になって発症します。
成人発症の食物アレルギーの代表的なタイプです。多くは花粉症の患者さんに症状が出ます。
特に果物に多く食べた直後から唇の腫れ、喉のイガイガ、チクチク感、口の中の痒み等の症状が現れます。
●原因
原因は果物の表面にあるたんぱく質(抗原)が、花粉のたんぱく質と似ているため花粉に対する抗体(IgE)が、果物の表面のたんぱく質に反応することで起こります。
スギ花粉症ではナス科(トマト)、カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ等)花粉ではバラ科(リンゴ、西洋梨、桃、サクランボ等)、イネ科花粉ではウリ科(メロン、スイカ)やマタタビ科(キウイ)やミカン科(オレンジ)で症状が見られることが知られています。
このたんぱく質抗原は構造が脆く熱などに弱いため、生の果物で症状が出ても調理した果物では症状が出ないことも多いです。胃で消化されても同様に壊れるため、腸から吸収されて(アナフィラキシー反応等)全身で症状が出ることは通常ありません。
食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)
●特徴
特定の食物を食べた後(通常2時間以内)運動することで、全身皮膚のじんましん、喘息発作、意識低下(酷いと失神)等アナフィラキシー反応が生じる現象です。
特定の食べ物を食べなければ起こらず、また食べても運動しなければ起こりません。
ある程度強い運動をする様になる10~20歳代で発症することがほとんどです。
●原因
特定の食べ物として小麦(62%)、甲殻類(28%)が原因として挙げられています。
新生児・乳児消化管アレルギー
●特徴
新生児期から乳児期にかけて主に人工乳が原因で、おう吐、下痢(血便)、体重増加不良が見られる病気です。
●原因
稀に母乳が原因となることがあります。
他の食物アレルギーとは異なりI型アレルギー反応ではないので検査でIgEは陽性になりません。
最近の研究で、消化管に白血球の1種である好酸球が多量に集まって起こる消化管疾患(好酸球性消化管疾患)の早発型ではないかと言われています。
食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)
原因食物摂取後1~4時間で嘔吐し、その後下痢をきたす疾患(病気)です。離乳食開始後卵黄で症状を認める乳児が増えています(当院でもほとんどの患者さんの原因が卵黄でした)。I型(即時型)アレルギー反応ではないのでアナフィラキシーショックのリスクはありません。年齢と共に軽快する傾向があります。
CCD(糖鎖)プロフィリン
多くの食品に共通して存在するCCDに対する感作が成立する(IgE陽性化すること)と、検査上多くの食品でIgE陽性となります。ただしCCDに対するIgEはアレルギー症状を引き起こしません。したがって多項目IgEが陽性であっても普通に食べられることになります。
魚アレルギー;パルブアルブミン(PA)
多くの魚に共通する抗原なので、これに陽性だと多種類の魚が食べられなくなります。経口負荷試験で個々の魚の摂取可能かどうかを確認する必要があります。マグロやカジキは食べられることが比較的多いようです。また缶詰(ツナ缶)も大丈夫なことが多いようです。
アニサキスアレルギー
主にイカや青魚(アジ、サバ等)の生食後4~5時間して激しい腹痛、発疹、せき込み等(重症例ではアナフィラキシーショック)のアレルギー症状をきたします。加熱食品で起こることは稀です。また症状としては腹痛から始まります。アニサキスに対する特異的IgEが陽性になります。
仮性アレルギー
一見アレルギー症状のように見えますが実際はアレルギー反応ではない症状です。代表例では鮮度の良くない魚を生食した後に起こる蕁麻疹現象です。これは時間経過で魚の中のヒスチジンが(大量の)ヒスタミンに変化し蕁麻疹を起こします。