気管支喘息
次にあげるような症状はありませんか?
●咳き込んだ時に胸でひゅーひゅー、ぜーぜーする音が聞かれる
●熱がないのに咳だけが1週間から10日以上続く
●寝入りばなや朝起きた時にしばらく咳き込む
●夜咳き込んで目覚めることがある
●走った後や大泣きした後に咳き込むことがある
●1日の中で咳き込む時間帯がある
●病院で「喘息気味かも」と言われたことが何回かある
上記の症状はいずれも気管支喘息の小児患者さんに見られやすい特徴です。
気管支喘息とは?
気管支がダメージを受けて細くなっていく病気
人は肺で呼吸(酸素を取り入れ二酸化炭素を出す)しています。
口から肺までの空気の通り道を気道と言って1本の気管が左右に分かれた後22回程奥に向かって枝分かれしていきます。次第に細くなり最後は肺胞という小さな袋に到達します(肺はちょうどブドウの房のようなイメージです)。
気管支喘息とはこの細い気管支が主に大気汚染(多くは車の排気ガス)の影響で慢性的にダメージを受け徐々に細くなっていく病気です。
「息苦しさ」と「咳き込み」が特徴的な症状
気管支は日常的に活動(太さを変えている)しています。
運動時は酸素を多く取り入れるためやや太くなり、休息時は逆にやや細くなります。
ダメージを受けている気管支は外からの刺激に対して過敏に反応するようになるため、通常以上に細くなる反応を起こします。そうなると、息苦しさを自覚し、楽になろうとして咳き込みが見られるようになります。この現象を喘息発作と言います。
この外からの刺激の代表的なものが化学物質(PM2.5やたばこの副流煙)や気温、気圧の急な変化です。
気管支喘息を適切に治療しないと数十年の経過で気管支が針のように細くなり肺にいったん入った空気が外にほとんど出ていかない状態となります(肺気腫)。
こうなると歩くだけで苦しくなるので酸素を自宅で吸入しないといけない生活に陥ります。
この状態で肺炎やインフルエンザにかかると残念な結果を迎えることになります。
現在でも高齢者を中心にこのような状態で毎年3000~5000人くらいの方が亡くなっています。
気管支喘息という病気をしっかりと理解して継続的に治療を行うことで、そのような状態は十分に予防可能です。
特に小児の場合は完全に治る可能性もある病気ですが、そのためには早期診断と早期の治療開始が必要です。
気管支喘息の診断
気管支喘息が、気管支が持続的にダメージを受けて通常より細くなっているという状態だというお話をしましたが、検査でこのことを明らかにすることが診断の基本になります。
ただ、小児では年齢的な制約からこの検査を一律に行えない難しさがあります。
① 概ね9歳以上
スパイロメトリーという機器を用いて呼吸機能を測定します。肺活量測定の時にも使われる機械で思い切り吸って吐く動作が必要となります。この測定で得られる呼吸曲線を解析することで気管支のどの部分でどの程度細くなっているかがわかります。
② 概ね6歳以上
気管支喘息ではダメージを受けている気管支からNO(一酸化窒素)が多く放出されることがわかってきました。喘息の患者さんではこのNO値が正常より高くなります(喘息患者さんでもコントロールが良くなるとこのNO値は下がってきますのでコントロール状況の評価にも使えます)。
TVゲーム形式の機器で測定できるようになりました。
小児の正常値が学会から示されましたのでこの年齢のお子さんの診断とコントロール状況の評価に有用です。
③ 5歳以下
①と②の診断方法が使えないこの年齢では臨床診断と治療的診断という手法を用いて診断します。
最初に挙げたような喘息特有の症状を繰り返すかどうか(3回以上)、喘息の治療薬(特にβ刺激薬と言われる気管支拡張薬)が実際に症状の改善に役立つかどうか、という経験を参考にして診断します。
また小児喘息の70%がダニ、ハウスダストにアレルギー反応を持つことからアレルギー検査(IgE測定)も役に立ちます。
気管支喘息の治療
年単位で治療計画を進めていきましょう
気管支喘息の治療は「ダメージを受けて細くなった気管支をもとの正常な状態に戻す」ことが基本となります。通常症状が出始めるまで1年~数年かかるため、元に戻す治療も年単位でかかります。大事なことは咳などの症状が消えても気管支の状態が正常に戻るまでしっかりと治療を継続することです。
当院での治療は経過中の症状をスコア化した喘息管理シートを使い、適宜呼気NO測定を用いて気管支のダメージの状態を評価しながら処方薬を調整していきます。
喘息治療を山登りに例えると、頂上(=治る)を目指して患者さん自身に一歩一歩上ってもらいます。
私は頂上までの安全で最短のルートをガイドしていきたいと思います。
ぜひ一緒に頂上を目指しましょう。
なお、当院での治療は「小児喘息の治療・管理ガイドライン」の最新版に準じて行います。