アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは?
血液検査でアトピー性皮膚炎を診断
乳幼児期から目の周り、耳の下、ひざ裏、肘等特徴的な部分の皮膚が乾燥、発赤し、痒みを伴う病気です。
多くの患者さんはダニに対するアレルギー反応を持っていて皮膚がダニ等の刺激に持続的に反応する(ダメージを受ける)ことが原因の1つと考えられています。
見た目では乳児湿疹との区別が難しい場合がありますが、アトピー性皮膚炎では血中のTARCというたんぱく質が明らかに増えてくるという特徴がありますのでこれを測定することでアトピー性皮膚炎の診断と重症度の予測が可能になりました。
アトピー性皮膚炎の治療と管理
成長に合わせたスキンケアを指導
もちろん痒みを特徴とする皮膚症状を改善させることが第1ですが、患者さんの皮膚は健常者の皮膚に比べて外的刺激に弱く乾燥しやすい(特に水分を保持する力は60%程度)という弱点がありますので成長に合わせて健常者の皮膚に近づけることも大切です。
最初の段階では、早く皮膚症状を改善する(急性期治療)、その上でそのよくなった状態を維持する(維持期の管理)という方向で行きます。
維持期の管理として、保湿を中心としたスキンケアーと週に1~2回だけ予防的にステロイド(あるいはプロトピック)軟膏塗布するプロアクテイブ療法を行います。また、健全な皮膚に近づけるための日常生活指導を行っています。
5歳以上で症状が続いているお子さんの場合、<ダニ>に対する舌下免疫療法が効果を認めるケースが多いため、積極的に導入しています。
ステロイドの副作用について
ステロイド使用による副作用を心配して必要以上にステロイド使用に拒否反応を示す方がいらっしゃいます。
その原因は過去に不適切なステロイド使用(濫用)される医療が一部の医療機関で行われたために重症のステロイド副作用の患者さんが生まれてしまったことが原因です。現在、そのような医療が行われることはまずありませんが、ステロイドに関する正しい理解をしていただきたいと思います。
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アレルギー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等)の多くは慢性炎症(火が燃えているイメージ)が原因です。炎症を抑えるには抗炎症剤(火を消すための水や消火剤のイメージ)が必要です。この抗炎症剤の代表的なものがステロイドになります。逆に抗炎症作用のない薬剤はアレルギー疾患を治す(根治療法)のではなく、症状を和らげる(対症療法)ものでしかないと思ってください。
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関節リウマチや膠原病等全身でこの炎症が起こっている場合は(火で家全体が燃えているイメージ)全身のステロイド投与(内服薬や注射薬)が必要ですが、アレルギー疾患のように局所での炎症(台所だけでフライパンから火が出ているイメージ)であれば、その部分だけの治療で十分です(吸入薬、点鼻薬、軟膏等)。この局所だけの薬は内服薬に比べて遥かに量が少ないため(一般的に内服薬の1/100~1/1000の量)、特に全身性の副作用も少なくなります。
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重症のアレルギー性疾患で内服薬のステロイド投与が必要な場合でも現代では内服のステロイドは出来るだけ短期にとどめ、他の製剤(例;喘息での生物学的製剤(オマリズマブ、メポリズマブ等))への切り替えを検討します。
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適切な治療を行わずに、病気が重症化すると重大な合併症を起こすことがあります。ステロイド拒否した重症のアトピー性皮膚炎のお子さんが眼を過度に擦ったために網膜剥離を起こして失明したことがありました。
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効果の認められた(科学的に立証された)医療はすべて保険診療で受けることができます。ステロイドを心配する患者さんの心理に漬け込む民間療法(アトピービジネス)に騙されないでください。
アトピー性皮膚炎の痒みに対する考察
アトピー性皮膚炎では皮膚の痒みが強いため、かなり強力な抗ヒスタミン薬を(場合によっては2剤)投与されている方が多いのではないでしょうか。(抗ヒスタミン薬の副作用については、アレルギー性鼻炎の項目で解説しましたので、そちらをご参照ください)。
アトピー性皮膚炎の痒みは末梢神経によるもの
そもそも、アトピー性皮膚炎の痒みは非ヒスタミン系(ヒスタミンが関与しない)痒みが主体であることをご存知でしょうか。ヒスタミンが原因ではない痒みに抗ヒスタミン薬を使うことが、アトピー性皮膚炎の患者さんに「痒み止め」が効きにくい最大の理由なのです。
アトピー性皮膚炎の痒みの原因は末梢神経による痒みと言われています。患者さんの皮膚は絶えず刺激されることによって末梢神経(特に感覚神経)が皮膚の表面近くまで枝を伸ばしてきている特徴があります。皮膚を刺激するとヒスタミンではない物質が、この神経に作用して痒みを感じるのです。
痒みの悪循環を断ち切ろう
では、どう対策したらよいのでしょうか?
まず、痒みの原因は皮膚の状態が良くない→掻く→さらに皮膚の状態が悪化する→痒みが強くなり更に掻く・・・という悪循環なので、これを断ち切ることです。
簡単に言うと強力な治療で早く皮膚の状態を良くして痒くない状態に持っていくことです。
また、神経の痒みであることから、皮膚のタッピング法も効果があります。タッピング法とは痒みを感じた時に皮膚を掻くのではなく軽くリズミカルに叩く方法です。末梢神経(感覚)は同時に2つの異なる感覚刺激があった場合片方の刺激により強く反応します。人間にとって重要なのは 痛み>痒みなので、叩く刺激により痒み感覚が弱まることになります。
健康な皮膚を目指して
健全に汗をかくことも治療の1つ
アトピー性皮膚炎の患者さんが小児期から大人に持ち越すか否かの最大のポイントは、小児期に健康な皮膚に近づけるか否かにかかっています。
皮膚が健康な状態を保つ上で重要なのは発汗です。汗には皮膚の新陳代謝やバリアー機能など様々な機能を正常に保つ作用があります。汗をかく機能は汗腺という汗を分泌する器官の能力によるのですが、この汗腺の数は小学校位までに決まってしまいます。アトピー性皮膚炎の患者さんはもともと汗をかきにくい構造なのですがこれは汗腺の数が少ないことが原因です。汗をかくことにより汗腺の数は増えていきます。
汗をかくと皮膚症状が悪化する、からと汗をかかないでいると汗をかくことが出来ない軟弱な皮膚のまま大人になってしまいます。
皮肉なことに私たちの小学校時代もアトピー性皮膚炎のお子さんはいましたが、学校に冷房設備がなくみんな汗をかいていたためか、小学校卒業時にはほとんど治っている状態でした。健全に汗をかいて、汗をかいたらシャワーを浴びる(できない時は少なくとも下着を着替える)等の対策をしながら上手に皮膚を鍛えていきましょう。